徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

香港 エリザベス女王即位記念(1953)

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イギリスのエリザベス女王が即位60年を迎え、昨日、記念式典が行われた。日本からも天皇皇后が午餐会に招待された。1953年、皇太子時代に女王の即位式にも参列した天皇にとっては、感慨深い訪英であったろう。

今日は、昔中国で買ってきた一品を紹介する。香港でエリザベス女王即位の記念イベントが行われた際に作られた記念品らしい。
長さ8cmほどの真鍮版で、周囲にあけられた穴で服などに縫いつけるものである。
昇り龍が中央に描かれ、「英女皇伊利沙伯二世加冕記念 巡遊会景金龍一九五三年六月二日 香港 華人慶祝英女皇加冕会景巡遊大会特製」と文字が打ち出されている。
「加冕」とは、戴冠の意である。
また、「エリザベス」の漢字表記が「伊利沙伯」となっているが、現在の中国語では「伊麗莎白」と表記するようである。
でも「金龍」ってなんのことだろう?香港におけるイギリス女王のシンボルなんだろうか。
台紙の裏には、準備委員会の責任者の印が押されているのがおもしろい。50年代初めの文書等には、まだ個人印の習慣が大陸中国でも残っているのである。

もちろんこの時代の香港はまだ、イギリスがアヘン戦争の結果として中国から99年間の租借している。イギリス植民地でありながら、「英女皇伊利沙伯」という表記や、大きく描かれた昇り龍など、イギリス女王もなにやらすっかり中華風味である。

1953年6月といえば、まだ朝鮮戦争の休戦協定が締結されていない(7月27日締結)。朝鮮半島では、実質的には中国軍は国連軍と交戦中であり、中国にとってはイギリスはもちろん敵国である。そんな時代の一品と思えば、香港と大陸はまったく逆の世界であったことを改めて感じる。

しかし、1949年の中華人民共和国成立以降、共産主義国家として出発した大陸中国においても、共産主義ですらやっぱり中華風味に調理されてしまうのであった。

私にとっては、そこが中国現代史のおもしろみと思っているのだが。