徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

エスペラント 第27回(1935)世界大会バッジ イタリア(ローマ)

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1905年以来、毎年開催されているエスペラント世界大会。戦争による中断などもあったが、2012年の第97回大会はベトナムハノイで開催されるという。
大会ごとにバッジが作られており、特に昔のモノは大変出来が良くてリッパ。今日はそんな一枚を紹介しよう。

画像は、1935年の第27回ローマ大会の記念バッジ
緑のリボンに、描かれているのはローマの建国神話に出てくるロムルスとレムスの兄弟である。建国神話で最も有名なのが、2人の幼児が雌オオカミの乳を飲むシーン。
親のカタキに捨てられた幼い兄弟は、雌オオカミに育てられるのである。やがて羊飼いを束ねる実力者となって、仇討ちに成功。後に、兄弟は指導者としてそれぞれ新しい都市を建設することとなる。
ところが、2人の街の間に境界問題が発生、争いの末、レムスはロムルスに殺されてしまう。このロムルスがローマの礎を築くことになるのである。
・・・どうも素性といいやることなすこといい、アウトローな建国の父である。

人間の赤子がオオカミに育てられたという伝承は世界のあちこちにあるが、実際にはオオカミという生き物は常に広大な縄張り内を長距離移動しながら生活しているそうで、人間の乳児を育てられるはずがないという。また、オオカミと人間の母乳の成分が違うなど、差異がありすぎて、人間の乳児が生きていける可能性はゼロであろう。
昔、私はオオカミに育てられたという野生児「カマラとアマラ」の記録を興味深く読んだことがあった。が、後にそれらの記録も記述者の創作と誇張に満ちており、全く科学的に信用できないということを知って少なからず驚いたことがある。
まあ、それにしても「オオカミに育てられた」というこれらの伝承は、人間とオオカミの関係を示していておもしろい。

話がずれた。
エスペラントの世界大会では、開催都市の歴史やシンボルが描かれたバッジが作られる。そこで27回大会ではローマ建国神話が採用された。
そして、今もローマではしばしば目にする「S.P.Q.R.」は、「元老院とローマの市民」の略。古代ローマの栄光をしのばせる文句である。
バッジの下には、「XXVII UNIVERSALA KONGRESO DE ESPERANTO EN ROMA 1935」(第27回エスペラント世界大会inローマ)とある。
バッジの出来、特に浮き彫りの技術は、他の世界大会のもに比べても非常にいい。また、バッジ本体の正方形の枠、同じ幅の四角いリボンなど、四角形を基調とした全体のバランスも好ましい。まあ、緑の星が描かれてなければ、遠目にはなんのバッジかサッパリわからないわけだが・・・。

ところで、1935年といえば、ムッソリーニ独裁体制下である。古代ローマの復活を掲げて、エチオピアと戦争したりしている最中。そう思うと建国神話を描いたバッジも少し政治的なニオイがしなくもない。
ナチスドイツではエスペラントは弾圧されたが、イタリアではどうだったのだろう。この頃はまだOKだったのだろうか。

裏面にはミラノの製造メーカー印がみえる。なぜかローマ製ではないが、イタリアバッジはミラノやフィレンツェ製が多い気がする。