徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

日本 要求米価バッジ(1974年)

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先日、安倍首相が施政方針演説で、経済改革の大きな柱として農協改革を取り上げた。全国農協中央会(全中)は徹底抗戦を展開するか、という予想もあったが、あっけなく政府の改革要求に屈し、5年後の一般社団法人化という方針を呑んだ。

安倍首相の圧勝であった。
これによって、全中は職員数も大幅に減り、単位農協を束ねる力を失い、政治への発言力も低下することは必然となろう。政府側とすれば、TPP交渉の足を引っ張るばかりの農協の発言力が低下することは、願ったりかなったりだ。

ところが、完全な圧勝・・・とは言い切れない。
農協の政治力が減るということは、自民党の集票力が減ることを意味する。農林水産省にしても、政策の実行に不可欠の受け皿を失うことになる。したがって今回の農協改革も、都道府県中央会を残したり、5年の猶予期間を設けたり、さまざまなソフトランディング対策を設けてはいる。

そもそも、今回の改革は、農業を成長産業にすることが目的なのである。全中をなくすことはできよう。だが、農業を成長させる政策は、一朝一夕にはならない。そんなことがホイホイできるなら、今日の農業の姿にはなっていない。その政策自体が、私にはまだよくわからない。外交安全保障問題ほど、農業改革について安倍首相は熱く語らない。たぶん、そのこと自体に関心がないのではないか。

余談が過ぎた。今日のバッジである。
かつて米は、政府が全量買い上げ、流通させる仕組みであった。それ以外の米はすべて「闇米」と言われた。生産者側は政府にできるだけ高く米を買い取ってもらいたい。事業者や消費者側はできるだけ安く売って欲しい。それぞれの圧力を受けて、生産者米価(=政府の米の買い取り価格)は、生産者米価(=政府からの販売価格)を超えるようになってしまった。
政府は高い値段で米を買い上げ、消費者に安く売っていたのである。どちらにも損はない・・・わけはなく、1兆円を超える税金を垂れ流し続けた。

画像のバッジは、「1974年 生産者米価要求」バッジである。
10kg 2,784円」とある。60kgにすると16,704円。今から40年以上昔の相場と考えれば、これは相当高い。賃金の変動を考慮すると、60kgの米が数万円で買い取られていたことになる。
今現在、こんな値段で市場に米を売れるところは、一部のブランド米に限られるだろう。

調べてみると、1974年の生産者米価は、60kgで13,709円、要求ベースで約70%である。政府側に値切りに負けたのか。それとも1973年と比べれば3,000円以上大幅アップしているので、実質勝利といえるのか。

このバッジ、裏面に「農協米対中央本部」の文字がある。正式名称を「農協米穀対策中央本部」という。全中が指揮する米対策用の組織である。かつて、生産者米価交渉で全中は全国の米農家の声を代表して大きな力を発揮したが、それも今は昔だ。

米の政府による全量買い上げ方式はなくなり、市場原理が導入。国民1人当たり米の消費量はどこまでも下がり続けており、海外からの米輸入も部分的に解禁、米の販売価格が上昇する見込みはどこを見渡してもない。そして、TPPがやってくる。

「10kgで2,784円」などという時代は、もはや来ないだろうなあ。