徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

日本 在外同胞学生同盟バッジ・腕章

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先日のユネスコの世界記憶遺産を巡る騒動は、何とも考えさせられるものがあった。

今月10日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、中国が申請した旧日本軍による「南京大虐殺に関する資料」について、世界記憶遺産への登録を発表。従来から中国側が主張する「南京大虐殺」について疑義を呈していた日本政府は、「世界記憶遺産の政治利用だ」と批判し、ユネスコへの拠出金の削減について公言するなど、反発を強めた。

しかし、日本が申請していた「第2次大戦後のシベリア抑留資料」と国宝「東寺百合文書」も、この時同時に登録が認められた。それに対して、今度はロシアが日本に対して反発を見せた。日本はシベリア抑留を「政治利用」しようとしているというのである。
ロシアにとっては、北方領土領有の正統性にも響く問題となりかねない。黙って見過ごす、という選択肢はあり得なかったのだろう。

さて、今日のバッジは、鳩型の「学生同盟」バッジ。一見左翼学生組織のものかと見間違えそうなものだが、そうではない。一緒に入手した腕章を見ればその正体がわかる。
すっかり汚れてしまった腕章には、「在外同胞救出学生同盟 AOMORI」の筆書きの文字がある。

在外同胞救出学生同盟」とは、戦後外地の引き揚げ者をケアするための学生ボランティア組織である。「在外父兄救出学生同盟」というのもあり、もともとは外地から日本内地へ「留学」していた在外日本人子弟による組織であるが、それに留まらず他の学生にもボランティア活動として広まっていったようだ(両組織の明違いがよくわからない)。
シベリア抑留の引き揚げと言えば舞鶴港が有名だが、京都にも学生同盟があり救援に当たった。

この腕章、赤十字マークが縫い込まれている。単なる救護のシンボル化とも思っていたが、必ずしもそうでもなさそうだ。
各地の学生同盟の支部を見ると、医学部や医学専門学校がその所在地になっているものが多く、医学系の学生が多く参加していたことがうかがえる。海外から国内に持ち込まれるおそれのある伝染病等対策や、病人怪我人の治療の必要性から、医学知識のある人材は需要に事欠かなかったであろう。

調べてみると、青森県には青森医学専門学校に学生同盟が結成されており、このバッジの持ち主もそこの学生だったのではないかと想像している。

バッジはネジ留め式で、学生服の詰め襟につけていたのかもしれない。
鳩のバッジと粗末な木綿の腕章を学生服につけ、彼は当時一体どのような光景を目にしただろうかと想像する。

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上海日僑自治会出入証