徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

北朝鮮 切手に登場した勲章、奨章類(1994年) ~金日成賞メダル~

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建国の主・金日成から、2代目金正日を経て、金家3代目の当主・金正恩が率いる北朝鮮
スイス留学経験もあり、若くして西側先進世界での生活体験を持つ若き指導者の登場に、当初世界は期待したのではなかったのか。
開明的指導者により、北朝鮮の改革開放は進むであろうと予想していた当時の有識者に、私は不満をぶつけたい。

結局動機は、「疑心暗鬼」に尽きるのだろう。先月2月13日、金正恩にとって異母兄となる金正男がマレーシアで殺害された。マレーシア当局は北朝鮮の組織的関与を指摘している。要は権力をめぐる弟による兄殺しである。

北朝鮮というと、以前から閉鎖的独裁的軍事国家というイメージが強いが、やはり金日成時代からするとかなり変質している。
主体思想チュチェ思想・・・おおなんと懐かしい響き!)、かつて北朝鮮の思想の中核をなした思想体系も、今や完全に死語化した。金正日は、権力の座に着くや父であり建国の英雄・金日成を奉りはしても、その思想からはどんどん離れていった(主体思想を体系化したとされる黄長燁も1997年韓国に亡命した)。
金正恩に至っては、その矛盾に悩むことなどまったくないであろう。

さて、日本の北朝鮮ウオッチャーにとって、懐かしい人物がいる。
立教大学名誉教授の井上周八氏である。チュチェ思想国際研究所理事長を務めた人物で、へえー、2014年に死去したのか(今知った)。
チュチェ思想研究や普及の功績で、北朝鮮から国際金日成を贈られている。
(もっとも日本国内では北朝鮮による日本人拉致事件を真っ向から否定し、評価を落とした)
金日成賞とは、要するにレーニン賞の北朝鮮版である。

画像はその記念切手(ミニシート)である。1994年の発行。これで切手が発行されてしまうというのもすごい。金日成賞の受賞というのはそれほどのことなのだろう。

私など、井上周八というと、下がり眉のヨボヨボの老人をイメージしてしまうのだが、この切手に写る姿は髪も黒々として若々しい。ああ井上周八さんもこんな時代があったのかという気分になった。

胸に金日成賞メダルをかけ、トロフィー(これも記念品なのだろう)を左手にもっている。それを拡大したのが左の図。光芒を放つ金日成賞メダル。上部には主体思想のシンボルマーク?のたいまつと「JUCHE(チュチェ)」の文字。金日成肖像の下には英語で「KIM IL SUNG」とある。受賞者は極めて少ないメダルである。
井上氏亡き後、このメダルは遺族が所有しているのだろうか。ちょっと気になる。

さて、以前、2012年に発行された金日成勲章やメダルの切手を紹介した。改めて新型の金日成賞メダルを見てほしい。金一色のメダルで、にこやかな老年の金日成肖像である。しかし違いは、何よりもJUCHE」の文字が消えたことであろう。シンボルのたいまつマークももちろんない。
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というわけで、金正日さえ故人となった今、北朝鮮ではチュチェ思想なんて全く顧みる必要も何もなくなっているのであろう。
そういえば、北朝鮮ではマルクス著書は事実上の発禁図書であるとか。

主体思想を打ち立てた金日成もなく、何だが華やかな国際イベントが好きだった金正日もなく、21世紀に登場したのが軍事的挑発一辺倒、兄殺しも厭わない青年であるとは・・・どうなるんだろうなあこの先は。