徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

バッジ・コレクターは今年も進む

あけましておめでとうございます。

今年も無事、みな健康で平和な新年を迎えることができた。
私の私生活のかなりの部分を占めるバッジ・コレクションのほうも、ありがたいことにそれなりの進展を見せ、まあこれ以上のラッキーを望んだらきっと天罰が下るであろう。


新年に当たって、いつもとは趣向を変えて、少し考えたことを書く。

昨年は、ハッキリとある変化を痛感した。コレクター市場が、明らかに変わったことを、認めざるを得ない。早い話、一部アイテムの価格高騰により、入手がだんだん困難になってきたのだ。
これから先、コレクターとしての身の振り方を考え直さなければならないかも知れないとすら、思った。

コレクターと一口に言ってもいろいろといる。例えば、「なんでも鑑定団」みたいなテレビ番組を見るとつくづくとそう思う。
あの番組に登場する鑑定依頼人には大きく2通りあって、ひとつは全くのシロウトが、家に昔から伝わるモノや偶然手に入れた正体不明品の価値を知りたいなどという、というパターン。もうひとつが、年季の入ったコレクターが、自慢の一品を鑑定して欲しいというパターン。
問題は後者である。
人情として、心血を注いだ自分のコレクションが高額に評価されればうれしいに決まっている。世間には、家族からコレクションを邪魔にされたり、無駄遣いと非難されるコレクターも多いのである。

で、つい考える。もし自分が鑑定依頼人だったら? そして、私の自慢の一品が高額の評価を受けたらどうだろうか?
そりゃまあ、うれしいことはうれしいだろう。自分の知識や判断力を他人から評価されるのが気持ちよくないはずはない。少なくとも、ニセモノと判明したり、安い評価だったりしたら、けっこう落ち込むだろう。
それでも、単純には喜べないと思う。
なぜなら、それは世間における特定アイテムの市場評価を上げてしまうことになり、コレクターとしては自分の首を絞めることにつながるからである。
ここで高評価を単純に喜べるコレクターというのは、コレクション道を実質的に降りてしまっている人なんじゃないかと思う。自分のコレクションを売り払うタイミングを見定めているような人である。
そう、コレクション道をまだ降りていない、つまりまだ買いたい私にとっては、市場の高評価というのは困る状況なのである。

ところで、昨年痛感した変化というのは、他でもない、中国関連バッジの価格高騰である。
最近、日本の骨董や古本の市場で、中国人の姿が非常に増えている。それはもう、傍目にもはっきりと感じられる変化である。
中国のGDPの数値が水増しされているかどうかは知らないが、中国マネーが勢いを増しているのは間違いない。それが、日本の古物市場にも流れ込んできている。カネを持った人が増えればコレクター層は充実する。そして買い手が増え、国内にモノが不足してくれば、よその国にも目が向くのは必然。
経済力を増した中国人は、自らのアイデンティティに目覚め、不幸で貧しい時代に失われた自らの歴史文物を取り戻そうとしている。まあその気持ちはわかるけど。
特に、中国と縁の深い日本には、中国の歴史的文物が数多く眠っている。その流れに乗り遅れるまいと、日本人業者も中国関連の文物を積極的に集めている。値は上がる一方である。

中国の古いバッジが好きで、これまで中国に通いつつ買い集めてきた私も、そろそろ限界を感じざるを得なくなってきた。
中国の古物市場に足を運んでも、知り合いのコレクターを訪ねても、良いモノは確実に減っているし、あっても驚くような高値がついていたりする。昔は、大概は少し奮発すれば買えないモノはなかったのが、今や高くてあきらめざるを得ないということが普通だ。昨年も一昨年も、中国を訪れてその思いを強くした。
以前なら、満州関連バッジなどは日本人にも好きな人がけっこういるので、中国で手に入れて日本のコレクターに売ることもあったが、今は中国で買った方が高いかもしれない(ただしモノにもよる)。
日本の骨董市場でも、中国関連バッジを高値で買っていくのは中国人で、だんだんこちらは手が出なくなってきた。それほど高騰しているのである。

中国バブルはいずれ崩壊すると言われて久しいような気がする。北京五輪が終われば、上海万博が終われば、中国経済は失速すると。2010年が終わったが、その予測はどうなったろうか?
まあ、たとえ中国の経済が頭打ちになっても、コレクター市場での相場がそうそう崩壊するとは思えない。仮に経済情勢がそうなっても、相場はほぼ高止まりするのではないかと私は見る。

このコレクション相場の高騰を、予測していなかったわけではない。私は中国への買い出し旅行から帰ってくるたび、知人に「時間との勝負だからねえ」と言っていたのだ。いずれ相場は上がる。そうならないうちの勝負だと。
漠然と、2008年の北京五輪ころまでが勝負のしどころと想像していたのだが、私にしては珍しく、予想はけっこう当たってしまったように思う。

そう、時代は変わったのである。残念ながら認めるしかない。
もう気に入ったモノを好きに買えた時代は終わってしまった。これからはもっと渋く、他の人があまり目をつけていない部分で、細々と自分なりの楽しみを見つけていくしかないだろう。
これからはいっそう冬の時代・・・というより、逆に考えれば、今までが幸福すぎる時代だったのかもしれない。ある程度のコレクションを築けた幸運を感謝すべきなのだ。


それでも今年も、私はバッジ・コレクターとして進もう。ますます厳しさを増す環境をかいくぐり、なんとか自分の楽しみを見つけよう。
今年の初詣にはまだ行っていないが、行ったら私は祈るであろう。願わくば、今年もすばらしいバッジに巡り会えますようにと。