徽章はバッジにしてピン

世界の徽章文化を考察するブログ。というか、バッジが大好き。コレクションを紹介したり、バッジに関する情報を考察したり。実用性皆無、実生活への寄与度ゼロ保障のブログです。

日本 結核予防国民運動バッジ

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先月、結核予防週間のポスターを職場の近くで見かけた。「咳が止まらない」等の症状があったら結核を疑って医療機関に、云々とあった。

私は、もう5年以上前だったか、長く咳が止まらない症状に悩んだことがある。初めは風邪をひいたので咳が残っているだろうくらいに考えていたのが、何週間も続くので、これはおかしいと思うようになった。2週間咳が続いたら結核を疑え、というネットの記事を見てちょっと驚いた覚えがある。2週間どころではなかったからだ。結核となれば法定伝染病である。隔離対象になる。周囲の人にも影響は及ぶ。これは大変だ、とちょっとビビった。
で、一応病院で見てもらったら、レントゲン結果から、結核はないでしょうとのことだった。ではなんなのかというと、百日咳の疑いがありますねと医者に言われた。その頃百日咳が流行していたのだ。調べてみますか?と聞かれて、私は好奇心から大いにその気になったが、聞けば、結果が出るまで時間がかかり、結果がわかったところで大した治療法があるわけでもなく、さらにけっこうな検査代がかかるのでやめておいた。
幸い、私の周囲で百日咳を発症した人はいなかったようで、感染源になりかねなかった私としてはいささかホッとしたものだ。

日本では、明治時代の死因第1位は結核だったそうだ。まだまだ働ける多くの優秀な人材を、この病で失った。予防注射や治療法の進歩により、死者は格段に減った。しかし、結核は過去の病気ではない、と専門家は警鐘を鳴らしている。日本では、今だに他の先進国に比べると発病・死亡者数はかなり高いままなのだという。やっぱり怖い病気なのである。

昭和11年、戦時体制の進展とともに一時減少傾向を見せていた結核が増加に転じたことを受け、「結核予防国民運動」が展開された。
このバッジは、いわばキャンペーンバッジである。日の丸と「健康日本」、「結核予防国民運動」の文字がある。薄づくりでペイント彩色の安価なバッジだ。縦25mm程度のちいさなバッジである。

結核予防国民運動の主な内容は、健康の増進と住居と日常生活の改善である。具体的には、運動と栄養バランス、清潔な居住空間十分な休養の必要性が呼びかけられた。

改めてこの内容を見て、まったくもってそのとおりと言うほかない。最新の科学はすでに証明しているのではないか、と私は思う。適度な健康、バランスの取れた食事、清潔の確保、十分な休養、これらより優れたいかなる健康法は存在しないということを。
そしてそれは結核を含むあらゆる病気への最大の防御なのである。

しかし、時代は残酷であった。この運動が始まった翌年には日中全面戦争が勃発。日本は、大陸での戦争を終わらせられないまま太平洋戦争へと突入し、国民生活はさらに悪化した。生活物資の不足や労働環境の悪化は結核患者をさらに増大させ、多くの悲劇を生んでいったのである。